006                     マンダム  記

世の中では科学で証明されていない不思議な話が沢山存在します。
信じない人が大半ですし、自分が見たわけでなし、学者の証明もなしで、信じろというほうが無理かもしれません。
UFOの話、霊魂に関わる話、古代史に関わる謎など、沢山有る中で比較的信じられやすい話にプロスポーツの世界で優れた選手が特殊な発言をすることが偶にニュースで紹介されることが有ります。
野球のバッターが今日は球が良く見えた、球が止まって見えた等や、ゴルファーがパターのラインが良く見えたということを聞きます。
実際には150km近い速球が目の前のベース盤の上付近1mを通過する時間はわずか0.02秒〜0.03秒ですから普通では横から見たら目に見えませんし、私も中学校で野球をやっていたので良く判ります。ところがこのボールが見えるというわけです。ボールが見えれば打ってヒットにすることも容易です。
 又ゴルフの経験も人一倍ありますが、傾斜したグリーンでどこへどのくらいの力で転がせばカップに寄ってくれるのか大いに悩みます。このラインが見えていれば後は力加減だけになりカップインの可能性がうんと高くなります。

これらに代表されるように人は精神を集中したときには、科学的には証明されていないような不思議な力が出せるということを私自身が実体験として何度か経験しました。
「火事場の馬鹿力」などという言葉もありますが、たとえ話ではなく実際にあることだと、私の体験からも信じています。

前置きはさておき
こうした不思議な体験を経験順に書き記してみました。

1.中学校の1年のときに選ばれて野球の試合に出たときのことです。3年生のピッチャーの球が速くて全く目に見えません。2打席3振で3打席目だったのですが、負けるものかという気持ちを込めたら球が少しずつ見えるようになり、3球目ぐらいには目の前に球が止まっている様に見えたので思い切って引っぱたきました。ボールが半分ぐらいに潰れてバットが食い込んでいるのまで目に焼きついています。打球は大飛球となって、レフトの頭上を遥かに越えてワンバウンドでグラウンドの場外へと消えていきました。
ついホームまで駆け込んだら、ワンバウンドでの場外だから3塁打だとしてサードまで戻されてしまった経緯があります。
動体視力が一気に数倍になったとでも言いましょうか(^▽^笑)。
錯覚では打てません、そこにボールがあったから思い切って叩けたのです。

2.車の運転免許を取立てで、レンタカーを借りて友人3人を乗せて遠乗りに出かけた時の話です。昭和の41年〜42年ごろ私が25歳ぐらいだったと思います。
岡崎方面から名古屋へ向かって国道一号線を走っておりましたが、当時はまだ車は少なく80kmぐらいで飛ばしておりました。
とある農道のような小さな交差する道路を左側から一台のタクシーが一号線へ接近しているのは確認していましたが、こちらが優先道路であり、当然いったん停止して私が通り過ぎてから侵入するものと思っていたところ、気が付かなかったのか10−20m位の目の前に飛び出してきて、そこで私に気づき加速して出て行けば未だ良しなのですが、急ブレーキを踏んで道をふさいだ形で停車してしまったのです。
びっくりしました、目に前に障害物が飛び出して来て止まっていると言う現象に出くわしたのです。思わず急ブレーキを踏んで右へ少しハンドルを切ったのでしょうね、タイヤーがロックして後輪が左方向へ滑り出し、停車する以前に左側面から相手にぶつかってしまうという局面でした。
これではいけないとブレーキから右足を外し、アクセルへ載せ変えて思いっきり踏みつけました。加速すれば荷重が後輪へ架かり尻振りが止まると同時にハンドルが利く様になります。
衝突を避けて飛び出した右車線には、対向車の代わりに自転車が2台並行して走ってきており、左向きにハンドルきり変えれませんので、右側車線の路肩まで直進して、2台の自転車の更に右を回りこんで迂回してから左車線へ戻りましたが、この間数回のスピンに近いような蛇行を繰り返し、良くぞ事故らずに済んだものと思いますが、同乗者3人は一様に一度はタクシーにぶつかると目を閉じ、次は自転車を跳ねたと目を閉じ、3度目は向こう側の田んぼへ突っ込んだと目を閉じたけど、無事に走っているのが信じられないと言われました。
ブレーキを踏み、車の横滑りを感じて、アクセルに踏み変え、加速して尻振りを止めて対向車線へ迂回するまでに1秒足らずの時間しかないのです。さらに右車線で自転車を回避して左側車線にに蛇行を繰り返しながら戻るまでにわずか1-2秒です。
こうした瞬間としか思えない時間に、ブレーキではぶつかると判断し、アクセルペダルへ踏み変えて後輪へ荷重をかけることで尻振りを止めてからハンドル操作で衝突を回避するという判断が出来ることが信じられないと思われます。(時速80kmでは1秒で22m進みます。)
ところが私の頭の中では十分な時間が有ったのです。ブレーキを踏んで車が尻を左へ振り始めた瞬間に、このままでは左側面からタクシーにぶつかると判断し、尻振りをとめるにはアクセルを踏んで加速することで荷重を後輪に架けることだとして、アクセルを吹かしてからハンドル操作で衝突回避の操作をするため十分に考える時間が有り、ぶつかる寸前にアクセルを吹かして加速行為を意識して行うことが出来たのです。
なお、2度の急ハンドルでスピンを起し掛けているのをカウンターステアリングで、修正しながら正常レーンへ戻ると言う神業的な行為でもあったのです。
言ってみれば頭脳が一瞬に高速側に切り替わり、1秒が1分に引き伸ばされたということでしょうか。普通のパソコンが一瞬でスーパーコンピューターに切り替わったわけです。
なお、免許取立てでありこうした高度な運転テクニックを学んだ経歴もないのにこうした操作が出来たこと自体が不思議と言えば不思議です。高度な運転テクニックを身につけたプロのレーシングドライバーにしか対処出来ない筈なのです。
この話は誰に説明しても信じてもらえませんが、同じような経験をスキーに行った時にも経験しました。次に記して見ます。

3.車を持つようになってから、スキーに夢中になり、よく車で長野へ出かけました。
当時は中央道などはなくて19号線を走ってゆくのですが、雪の峠道で尻振りを起したのを立直し立直ししながら爆走(暴走では有りません)をしたものです。
ところどころ雪のある19号線を名古屋から長野まで320kを4時間ほどで走りぬいたこともあります。
一番強く思い出すのが、乗鞍高原でのスキーの帰りに、本来松本へ出るのですが、19号線の混雑を避けるために野麦峠方面への迂回路を通って薮原へ抜ける裏道を通ったときのことです。
長い下り坂が終わってT字路を右折するコースをエンジンブレーキで雪道を下って行き、いざ右折しようと右へハンドルを切ったのですがそのまま直進してゆきます。慌てました、いわゆるパニック状態で、ブレーキを踏んだらそのまま直進して崖から転落してしまいます。
後輪でエンジンブレーキを架けながら坂道を下っているときは車の前部のエンジンが錘となって車を坂道の下へ向かって引っ張っているので慣性が付いており、前輪のタイヤが方向を変えても錘が引っ張っている方向(直進方向)へ雪を押し分けたまま進むのです。
はてどうしたものか?と考えて導き出した結論が「アクセルを吹かせ」でした。
後輪が加速することで、前輪が横向いていることが抵抗となり、尻振りが起こるのです。
チョンとアクセルを踏んだ一瞬、車の向きが90度横向きとなり、T字路を右折して行ったのです。山道を下っていって周回道路へ右折して入るときにスリップして止まらず曲がらずで崖を飛び出す寸前にアクセルを踏んで加速行為を行ったわけです。
おそらくこれらを考えて判断する時間は地球時間では1秒も無い筈ですが、私には十分な時間が有り、一度もブレーキに足をかけていません。
こうした対処法はゆっくりと時間を掛けて考えてみるとまさにそれしかないという唯一正しい方法なのですが、只の素人ドライバーにしか過ぎない私がそれを行えた事が不思議です。

2、と3、の体験は本来私自身が試したり経験したりしたことが無い筈の、これしかないという究極の運転テクニックをパニック時に発揮して危機を回避した体験として鮮やかに記憶に刻まれております。なお、この経験は一定の限界内での事故回避経験であり、限界を超えていた条件のため回避できなかった経験も自損事故として2度ほど経験しています。
アイルトン・セナは一瞬の判断を誤り命を落としましたが、彼らのように実戦経験から瞬間的な行動を身体が覚えているということとは全く違う体験だと思っています。

4.次はゴルフにおける同じような経験です。
サラリーマンゴルファーに過ぎない私でしたが、係長になった36歳ごろから練習を始めて、一時は熱中して夢中になっていた時代があります。中年になってから始めたサラリーマンゴルフで70台を3回記録しましたので上達が早かった方だと思います。。
多治見CCの10番ホールでの経験ですが、ティーショットを左の山裾に打ち込んでしまい、グリーン方向へはボールを打てない位置に止まっていました。素人の癖にプロのようなつもりでインテンショナルフックボールを左側の山裾から右方向へ打ち出したところ、思い描いたとおりに急激に左へカーブして見えていないグリーン方向へボールが向かったので「しめしめ」と駆け出したところ、「入ったぞ〜〜」という声が聞こえ、びっくりすると同時に「やったね」という笑みが出たものです。PAR4を2打であがりましたからイーグルです。プロゴルファーでも意識してフックボールを打ち、ブラインドになって見えないグリーンへボールを乗せる事は大変な技ですが、それがイーグルになることはプロでも難しい奇跡です。なお、イーグルは都合4回記録していますが、素人ゴルファーにとって通常一生に一度あるかないかのことです。集中すると思いがけない力が出せるものだと感じています。勿論上手く行かずに失敗してしまった方が圧倒的に多いことは申すまでも有りません(笑)。

ある時、傾斜の酷い難しいグリーンで定評のある三重カントリー湯ノ山コースでカップの左側8m程にオンしたときの話ですが、ボールの位置からは大幅に右へ傾斜しており、カップを狙うためにはカップより左方向へ45度ぐらいで打ち出す必要があり、又距離感も大変難しく、3パット必須と思われる位置関係でした。
ぐっと気を引き締めて芝を睨みつけたときに、ふと気づくと左から右へ大きく湾曲した2本線の溝が見えているではありませんか、驚くと共に、「うん、これだ」と思いました。溝が見えているから後は距離感を大事に力加減だけ合わせて、溝からボールがこぼれ出ないように転がしました。力が強すぎれば曲がらずに直進して溝から左へこぼれ、弱ければ右へ垂れ落ちます。40%ほどライン通りに進み、一番肝心なカーブの頂点をラインに沿って曲がり始めた時に思わず「入った〜!」と声が出ました。他のメンバー3人は不思議そうな顔をしています。やがて「コローン」とカップに吸い込まれ、どうしてあそこで入ったと判るのかと、色々言われました。
ボールの位置から見ればカップの左45度の方向へ転がしたボールが未だカップへ向かわないうちに入ったと判って声が出たといっても誰も信用しません。
ラインが見えたと言っても「ふ〜ん」で終わりでした(^▽^笑)。


これらの実体験から考えられることは人は通常科学的に解明されている能力とは別に更に数倍もあるような大きな潜在能力があり、特殊な状態に陥ったときや、意識的に集中したときなどにそれを発揮することが出来る人間が居るということです。すべての人が持っているものだと思いますが、その能力を使うことが出来る人は僅かだけに絞られるので、科学的な証明が無いだけなのです。
好きなパソコンにたとえることで解明できるような気がします。CPUの速さが突如数倍に切り替わるということでしょうか、昔から危機に際してはパニックになって正しく判断できない人が大半ですが、中には一気にアドレナリンが頭の中を駆け巡り、普段思いつかないような考えが出てきたり、力を出せたりする種類の人も沢山居ます。今まで学んでいないことが実行できたという経験から、人の頭脳には生まれたときから沢山のデーターが埋め込まれていてそれを引き出して使える人がいると言うことだと感じています。
幸いというか、私自身がこうした経験を何度かしたので紹介した次第です。
会員の中にもこれに類したような、不思議体験をされて方が居られるなら、是非その体験をお聞かせ下さい。

(完)    マンダム